オープンから1年
“イメージしていた数字”に
TOMO:オープン1年、おめでとうございます。
上原:はい、ありがとうございます(笑)。
TOMO:2年目最初のスタートを切ったわけですが、お店はどんな調子でしたか?
上原:平均的というか、忙しすぎもせず、かといって暇でもなく。数字的にも、オープンしたときにイメージしていたものに近かったですね。
TOMO:無理なく、せかせかせずにできるペースだったわけですね。お客様の動き方はどうでしたか? 7月は新型コロナの第2波か? と言われたりもしていましたよね。
上原:その影響はあまり感じられませんでしたね。先月多かったホームページ経由の新規客もゼロでしたし、近隣エリアでサロンを探している人も落ち着いてきたんじゃないかと。
長期顧客は未だに戻らず
TOMO:既存のお客様のリターン状況に変化はありましたか?
上原:まだまだ戻らないですね…。他サロンの友人とも話しているのですが、コロナ以後、長く担当しているお客様が来店されなくなるケースは多いようです。関係性が築けている方が来なくなるのは正直寂しいんですが…、状況が好転したときにまた来店いただけるように、しっかりサロンを続けていこうと今は思ってます。
顧客に支えらた1年間
TOMO:nariiオープンから1年やられてみて、実際のところ、そうした関係の長いお客様はどれくらいの割合で通い続けてくれたんでしょうか?
上原:コロナ以前というところで言うと、肌感覚では7~8割の方がずっと来てくれていましたね。オープン当初は、エリアを東京から向ケ丘遊園に移したこともあって、フェードアウトも覚悟していたのですが、ほとんどのお客様が通い続けて支えてくれました。
TOMO:そうしたお客様のことも含め、予測し切れないところも多かったと思います。
上原:改めてスタイリストデビューしたような感覚でしたね。フリーランスを経験していたから、出ていくお金のイメージはついていたんですが、正直、売上は未知数でした。エリア内だと高額な料金設定ですし、周りからは「ムリなんじゃない?」と言われることもあったので。だから、設備も含め、最初は最低限でスタートして、徐々に整えていったところはありましたね。
年間目標は達成叶わず
継続して数字をアップ
TOMO:オープン当初、売上平均120万円、新規客15名/月という目標を設定していました。結果として、売上面では目標に届きませんでしたが、どう分析しますか?
上原:来店周期を読み違えていたところはありましたね。2~3か月周期と見込んでいたのですが、僕がペルソナに設定している働く子育て世代だと、プラス1か月。月々の入客数のムラを均していく意味でも、顧客化だったり、新規料金の見直しだったり、「僕じゃなきゃダメなお客様」を増やして、平均120万円を目指していくつもりです。
TOMO:新型コロナによる、休業などの影響も少なくないですよね。
上原:年明けから、3月~5月が平均120万円に達するように仕掛けていたので、そこで結果を出せる状況になかったのは悔やまれますね。想定通りの売上だったら、110万円代にはとどいたんですが…!
ブランディングのベースづくりに
励んだ1年間
TOMO:集客だけではなく、お店のコンセプトを伝えるためにコンテンツもつくってきましたね。
上原:サロンブランディングのベースづくりはやってこれたんじゃないかなと思います。ZINEの制作だったり、ポップアップだったり、お客様が楽しめて、ここに来る理由になるようなことを常に考えていました。
期待値の高い仕事を
自身に課す
TOMO:ランディングページにも注力してきましたよね。
上原:やっぱり期待値の高い仕事をしたいんですよね。「その美容師に会う」ことがお客様のモチベーションと直結しているタイプの美容師っているけど、僕はそういうタイプでもない、あくまでもヘアありきの美容師だと思っていて。
一人で営業していると、正直手抜きだってできるんです。だからこそ、自分自身へのプレッシャーが大事で。nariiに来ることでどういう自分になれて、どうライフスタイルが変わるのかを提示して、実際に叶えることが僕の責任になりますから。あとはSNS集客でのズレを感じたところもあったんですよね。
TOMO:ズレというと?
上原:もちろんSNSキッカケで来続けてくれる方も多いですが、一見さんのような方もチラホラいて、特に最初の頃。もちろん僕の力不足が原因ということもあれば、近くだから何となく来てみた、というケースもあったんですよね。
「都心まで行かなくても上質なヘアを…」というコンセプトをSNSで提示するだけだと、マッチングが弱いんじゃないかと思ったんです。LPやHPをブラッシュアップさせる過程で、SNSの発信方法も、より刺さるものは何かを考えるようになりました。
TOMO:実際に、生身のお客様と接することを通じた気付きがあったと。
上原:そうですね、フリーランスのときは既存の方がほとんどだったので、こんなに新規の方と接したのはデビュー1年目以来です(笑)。
改めて思ったのは、コンプレックスを魅力に変える仕事の大切さ。これまで似合わないと思っていたショートにチャレンジできたり、クセ毛を活かせたり、パーマで良い質感が持続したり、そういったパーソナルな部分に寄り添える仕事こそ求められているんじゃないかと。
TOMO:そこにマッチングのポイントがあるわけですね。
上原:僕は“ショート美容師”とか、“パーマ美容師”になりたいわけじゃないんですよ。あくまでも目的は、ヘアを通じでライフスタイルを豊かにすることなので。その分、引き出しは多様じゃないといけないから、RITZ時代・フリーランス時代に、沢山の人の仕事を見れたことは本当に財産です。
お客様減少の中で見えた
コンセプトの必要性
TOMO:この1年を語るうえで、新型コロナのことははずせないと思います。今現在も渦中ではありますが、どう振り返りますか?
上原:日々状況が変わる中で、判断を迫られた時期でした。3月から4月にかけては既存の方、特に遠方からいつも来てくださっている方が来られない状況になってしまって。
休業もあって売上的には痛手でしたが、「1人営業だから安全です」と謳って集客したくなかったんですね、それがウリじゃないし。だからこそ元々のコンセプトに立ち戻って、近隣の方たちに知ってもらえる取り組みにシフトしました。
TOMO:春先からSNSの見直しや検索エンジンのレビューなど、期待値を高める土台づくりをしていましたよね。
上原:既存のお客様がまた気が向いたときに戻ってこられるように、店は守っていかないといけないですから。こう言うと軽率かも知れませんけど、そもそも何をしたかったのか、立ち戻って深める機会になったんじゃないかと思っています。
新たな仲間と、新たな未来へ
TOMO:ここから新たな1年がスタートしますが、これからの展望を聞かせてください。
上原:この秋にスタイリストが1名増えるので、よりブランド力を高めていきたいです。僕の色もありながら、スタッフの色も際立つような、ともにやっていける力をつけるというか。
今は「向ヶ丘遊園にあるnarii」ですが、サロン名だけでもちゃんと通じる存在にしていたいと思ってます。
TOMO:スタッフ数が増えることでのお客様への影響はどうですか? これまでのプライベートな空間に変化が起きるわけですよね。
上原:確かに今の空間に魅力を感じているお客様は多いんですよね。そこは逆手に取って、貸切デーをつくったり、新しいサービスにつなげようと思ってます。
あとやっぱり、人と働くって僕にとっては大切なんですよね。一人って自分自身が古くなっていく怖さがあるんですよ。新陳代謝し続けるには、他の考えや仕事に触れることがやっぱり必要かなと。
この街とともに歩み
本質的な仕事を
TOMO:発信や活動についてはどうですか?
上原:継続課題は結構あるんですよね。ZINEもコロナ以降ストップしちゃってますし、LPやHPにも新しいコンテンツを追加しなきゃなタイミングで。
ポップアップ企画も続けていきますが、今後は近隣エリアの商店とのコラボレーションもしていきたいなと思ってて。向ケ丘遊園はこの数年で大きく変わっていくエリアなので、街と一緒に活性化しながら、本質的な仕事をできる環境をつくっていくつもりです。
●出店にまつわるアレコレはこちら
新米オーナーのサロン経営日誌①【出店編】
●オープン初月はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌➁【オープン初月 / 19年7月】
●オープン2か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌③【オープン2か月目 / 19年8月】
●オープン3か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌④【オープン3か月目 / 19年9月】
●オープン4か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑤【オープン4か月目 / 19年10月】
●オープン5か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑥【オープン5か月目 / 19年11月】
●オープン6か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑦【オープン6か月目 / 19年12月】
●オープン7か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑧【オープン7か月目 / 20年1月】
●オープン8か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑨【オープン8か月目 / 20年2月】
●オープン9か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑩【オープン9か月目 / 20年3月】
●オープン10か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑪【オープン10か月目 / 20年4月】
●オープン11か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑫【オープン11か月目 / 20年5月】
●オープン12か月目はこちら
新米オーナーのサロン経営日誌⑬【オープン12か月目 / 20年6月】
OWNER PROFILE & SALON DATA
上原卓也
神奈川県相模原市出身。住田美容専門学校卒業後、東京都内のサロン『RITZ』にて8年間勤めたのち、フリーランスとして活動。シェアサロンの店舗管理者としてサロン運営の基礎を学び、2019年7月4日に自身のサロン『narii』を神奈川県川崎市の向ケ丘遊園駅前にオープン。現在も、既存顧客のために都内のシェアサロンに立つ。
『narii』
立地 / 小田急線向ヶ丘遊園駅北口徒歩1分
坪数 / 15坪 2F
スタッフ数 / 1名
セット面2 / 2面
シャンプー台 / フルフラットタイプ2台