2019年の7月に独立した若手オーナーの、等身大なサロン経営を追っかける連載企画がスタート! 編集部が密着する新米オーナーは、上原卓也さんです。上原さんは東京都内で、『RITZ』で8年間勤めたのちに、2年半のフリーランス経験を経て、自身のサロン『narii』をオープンさせました。そんな、10年間都内で働いてきた彼が新天地として選んだ場所は、神奈川県川崎市の「向ヶ丘遊園」。ここからどんなドラマが生まれて、サロンがどんな変化を辿っていくのか、一緒に見ていきましょう! 初回となる今回は、出店の経緯をアレコレ聞いていきます。
“出会い”を開拓できる
場所をつくりたい
TOMOTOMO(以下トモ):まず、出店おめでとうございます!
上原卓也(以下上原):ありがとうございます!
トモ:早速ですが、上原さんは美容学校を卒業して『RITZ』にお勤めになって、『GO TODAY SHAiRE SALON原宿本店』にてフリーランスとして経験を積まれてきたと。10年間、都内で腕を振るってきたわけですが、あえて向ケ丘遊園という場所を選んだのはどうしてですか?
上原:僕、地元が神奈川県の相模大野なんです。このエリアは、地元と東京の中間地点。『RITZ』や『GO TODAY』で出会った人たち、地元の人たち、両方のコミュニティが交われる場所をつくりたかったんです。あと僕、両親がいないこともあって、自分の場所持ちたかったというのもあるかも知れませんね。『narii』があることによって、自分の大事な人が集えて、出会いを開拓できるというか。
グレーを基調にしたスタイリッシュな空間で、デザイナーを中学時代の同級生に紹介してもらった。15坪、セット面2面(1面増設できる)、フルフラットタイプのシャンプー台が2台。人と人とが出会える場として、イベントスペースとしての活用も思案中。
トモ:東京と地元のコミュニティということですが、出店においても関わりはあったんですか?
上原:そうですね、色々関わってもらってるんですが……例えばロゴと名刺は、『GO TODAY』で出会ったえいと(宮永えいとさん)にデザインしてもらっていたり、内装デザインは中学の同級生の友人に。この物件も、不動産業をしている友人に紹介してもらいました。
『GO TODAY SHAiRE SALON』で出会った宮永えいとさんにデザインしてもらったサロンロゴ。上原さんの名前に使われている「也(なり)」から考えたコンセプト「業、成、形、鳴、生」を6つの円で表現している。
質の高い技術・スタイルで
“諦めてしまった人”を救いたい
トモ:上原さんが築きあげてきた人たちの支えがあって、『narii』が誕生したんですね! ただ、地元と東京の間といっても、向ケ丘遊園は上原さんにとって縁遠い場所だったのでは?
上原:まさに“見知らぬ土地”でした。もともとは新百合ヶ丘を狙ってたのですが、予算含めて物件に巡り合えず、ここに落ち着いた経緯があります。ただ調べてみると、これからエリア一帯の開発計画があるんですよ。向ケ丘遊園跡地には日帰り温泉施設やグランピングエリア、ショッピングモールが建ったり、人も増えていく兆しがあるんです。
小田急線向ヶ丘遊園駅北口。これから4~5年でエリア一帯が開発される予定があり、上原さんもその将来性を見込んで出店を決めた。
上原:また、僕の経験上、「地元に良い美容室があれば東京まで出ない」という人も増えているんじゃないかと思って。これまでは東京の美容室で髪を切っていたけど、仕事や子育てで忙しくて、諦めてしまっている人。そういった人に、東京まで行かなくても質の高い技術とデザインを届けたいと考えたんです。
トモ:料金も、カットだと¥6,500+税と、近隣のお店と比べて高く設定しているのはそのため?
上原:多分エリアの平均が¥3~4,000だと思うので、差別化する意味でも強気設定です(笑)。店を出したこともそうですが、責任を持って仕事に取り組みたいという気持ちもあります。
サロンは新築物件の2F。駅前商店街を通って徒歩1分の立地。
金利を抑えるため事業計画はしっかり
トモ:ではここから、お金関係を聞かせてください。まず、開業にあたってどれくらいの金額がかかったんですか?
上原:開業資金は、自己資金200万円と、信用金庫からの借入が1,000万円の計1,200万円です。信金にしたのは、金利面ですね。融資してもらうために事業計画書を提出するのすが、これかはかなり入念につくりました。
トモ:上原さんの実感として、借入の際にどんなことがアピールになったと思いますか?
上原:今までにないサロンだということですかね。サロンをつくることで、近隣のお店も含めて、地域を活性化できるということもプレゼンしました。
上原:あとやっぱり、集客に関することは細かく聞かれました。うちはクーポン付きのポータルサイトは利用しないので、SNSでの集客方法だったり、サロンをイベントスペースとして活用することだったり、独自発信を通して単価をアップさせていくプロセスを組み立てました。
そういった点が、担当者の方に新鮮味や融資の回収もできる、というイメージを与えることができたのかなと。
正直、融資に漕ぎ着けるまでの期間が一番大変でしたね。お客様を担当しながら何度も信金に足を運んで、同時に内装の打ち合わせもして、という生活だったので。
オープンに向けてのスタートライン!
固定費が読めない不安も
トモ:物件にも巡り合い、融資審査も無事くぐり抜けて、ようやく具体的なサロン運営のイメージを膨らせられる段階になったんじゃないかと想像します。
初月の売り上げ見込みはどう立てましたか? 見知らぬ土地での出店とあって予測しきれないことあったのでは?
上原:週1日、『GO TODAY』にも出勤しているのですが、その売上が大体25万前後、『narii』での売上が70万の、総売で計95万円を見込みました。しばらくフリーランスだったからか、店販のことはすっかり抜けてて、技術売りだけで計算してました。
上原:予測しにくかったのは固定費ですね。家賃や返済はハッキリしてますが、材料費や光熱費、その他の雑費は正直スタートしてみないと分からなくて。
その分、自分の人件費は店が軌道に乗るまで固定にするつもりです。
初年度は新規15名/月
売上120万円キープが目標!
トモ:短期目標としてこの1年どうしていきたいですか?
上原:まずは基盤づくりですね。数字的なところでは、毎月15名の新規のお客様を呼んで確実にリターンしていただけるようにして、月の売上120万円をキープしたいです。体感として、うちの料金設定だと、月120万円が一人で無理なくできる範囲と見込んでいます。
トモ:中長期として、どんなことをやっていく予定ですか?
上原:この1年でも取り組んでいくので、長期ではないかも知れませんが、仕事の幅を広げる活動をしていくつもりです。「人が人を呼ぶサロン」にしていきたいので、人脈の幅をもっと広げたいと思っています。撮影も継続していきたいですし、サロンをイベントスペースとして貸し出すことも考えていて。
地域に根付いたサロンにしてきたい反面、“地元感”みたいなものは匂わせたくないんですよ。良い意味で向ケ丘遊園っぽくない発信をしていくために、土台をつくっていくつもりです。
OWNER PROFILE & SALON DATA
上原卓也
神奈川県相模原市出身。住田美容専門学校卒業後、東京都内のサロン『RITZ』にて8年間勤めたのち、『GO TODAY SHAiRE SALON原宿本店』にてフリーランスとして活動。店舗管理者としてサロン運営の基礎を学び、2019年7月4日に自身のサロン『narii』を神奈川県川崎市の向ケ丘遊園駅前にオープン。
『narii』
立地 / 小田急線向ヶ丘遊園駅北口徒歩1分
坪数 / 15坪 2F
スタッフ数 / 1名
セット面2 / 2面
シャンプー台 / フルフラットタイプ2台