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顔まわりから決めるカット その1

いま、カットの教育においては学ぶ側も教える側も難しさを感じているといいます。将来を見据えてしっかりした技術を習得するために、TOMOTOMOで提案しているのは……

 

 

ヘアスタイルの“見せ場”とカットの関係

すそを切って、適当に削ぎを入れる。ワックスでスタイリングするか、アイロンで巻いて仕上げる。今のヘアスタイルって、意外とこれでなんとかなっちゃうことも多いみたいです。実際、まだカットを習っていない人がスタイリングだけで作ったヘアに、はっとさせられることもあったり。

ただし、この切り方しかできないと、いずれ行き詰まることは十分予測できます。スタイリングができない・したくないお客様には不向きだし、つながりのない無秩序なカットは、もちも悪い。それにボリュームが減ってきた髪には向かないという問題もあります。

これに気がついた美容師さんが、しっかりベーシックカットを勉強しよう! と練習に取り組む。しかし習得にいたらず、途中で挫折してしまう人も結構な割合でいる。それどころかカットそのものが嫌いになってしまうケースもあるようで、学ぶ・教えるというのは双方大変です。

 

 

カットを難しくしているのは何だろう?

何がカット習得を難しくしているのか。理由はいくつかあるかもしれませんが、今の日本で一般に好まれているスタイルと、練習のためのスタイルが違い過ぎる。特に若い美容師さんにとって、障害になるのはここなのではないでしょうか?

デザインと技術は密接に結びついています。従来のベーシックカットは、バックから切っていくケースが多いですが、これはフォルム重視でバックに見せ場のあるデザインなら、自然な話であり、合理的です。

しかし、今の日本の若いお客様&美容師さんが好むヘアスタイルの見せ場は、後ろにはありません。ヘアスタイルへのこだわりは、たいがい顔まわりに集中しています。気にしているのは、たとえば前髪の長さ、フロントの髪で顔をどれくらい隠すか、シルエットを作る髪のふわふわした柔らかさ、鎖骨あたりから胸上に落ちるロングの毛先の表情など。すべて正面から見える範疇の要素です。横から見た時の立体的なフォルムをいいなあ……と思えるのは、もう少し先の話です。

正面から見えるビジュアルにこだわりを持っているのに、練習するのはバックから緻密なグラデーションを積み上げていくようなカットだとすると、何やらピンとこないでしょう。挫折してしまう人がいるのも仕方ないかなと思います。

 

 

どこから切ってもいいのでは?

せっかく無秩序な削ぎに頼ったカットから脱却し、「つなげるカット」をしようと努力している若い人のために、従来のベーシックカットとは異なるカットの考え方があってもいいのではないでしょうか。書籍版TOMOTOMO第1号のテーマ「顔まわりから決めるカット」は、こんな背景から生まれました。

顔まわりから決めると言っても、時代におもねったフォルム軽視のカット技術や、雰囲気だけのスタイリング頼りのカットを紹介したいわけではありません。もちろん前髪の切り方の本でもないのです。

目標はあくまで「スタイル全体の組み立てができるようになろう」です。それができれば、バックから切ろうが顔まわりから切ろうが、トップから切ろうが、かまわない。要は一番気になる部分、デザインとして重視される部分を先に決めて、そこから全体を組み立てていこう――この本ではそういう提案をしています。

 

(顔まわりから決めるカット その2 に続きます)

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