流行とお客様の日常
ヘアスタイルを変える楽しみを届けたい。
―ヘアスタイルを発信したり、お客様に提供するとき、なにを大切にしてる?
流行っているかどうか、は常に意識しています。よく「年齢に合わせた髪型」ってあるじゃないですか。僕としては、そういう髪型ってないな、と思うんですよ。
やっぱりお客様にとってはお洒落で可愛いことが嬉しいですし、年齢に関係なく、流行りも含めて変化を楽しみたい気持ちを持っているはずなので。
―ヘアスタイルを変えることの楽しさを感じてもらいたいんですね。
あとは、日常にちゃんと寄り添えているかどうか、も大事にしてます。手入れがし易かったり、持ちが良かったり、ライフスタイルに合ったヘアを提供することで、お客様と長く付き合っていけると思うので。
なので、流行りのエッセンスを、ベーシックなテクニックに組み合わせて落とし込む、ということを意識してヘアをつくっています。
後輩たちからもらえるエッセンスで
自分の感覚をアップデート。
画像:へぎさんのInstagram(@hegi__sand)より
―流行のエッセンスって、どう自分に取り入れているんですか?
後輩たちからもらうことが多いですね。今ボブ推しなのですが、それも僕のチームメンバーにボブ好きの子がいたから、というのが理由の1つなんです。
もちろん、コロナ禍で長持ちさせたいお客様が増えたことや、ショートから伸ばす傾向にあることとか、そうした世の中の流れも考えているんですが、やっぱり、若い世代が興味を持っていることから学べることって多いですね。
―若い世代から、どんなヒントをもらってる?
今の気分みたいなものですね。「こんなに前髪パッツンにするんだ!」とか、「こういう巻き方してるんだ!」とか、後輩のインスタとかヘアスタイルには、リアルタイムの可愛いがあるんですよね。
新卒で入った後輩たちと接していると、僕のカットに興味持ってないと感じる瞬間があったりもするんです。そういう時こそ、自分を更新するチャンス。彼らはサロンの中でも、一番お客様に近い感覚を持っている存在でもあるので。
具体的なお客様をイメージして
ヘアスタイルを観察する
画像:へぎさんのInstagram(@hegi__sand)より
―技術的なところはどうやって更新してる?
他の美容師の方々のヘアスタイルからも勉強してますね。僕のテイストとは違ったクリエイティブなヘアスタイルから、質感だったり、カットラインだったり、なんで可愛いのかを見つけるようにしています。
―切り方だったりとか、技法を分析するということ?
それもあるんですけど、自分のお客様に向けてどう使えるのかまで、イメージを広げられるかどうかを考えています。こういう提案の仕方ができるなとか、あの方に次回やってみようとか、具体的なサイクルに結び付けられたときに「見つけた!」っていう感覚になるんですよね。
美容師目線≠お客様目線
―技術のアプローチも、お客様の顔を思い浮かべてストックしてるんですね。
これはスタイリストになる前から思っていることなんですが、美容師目線の髪型と、お客様に人気の髪型はイコールじゃないんです。
ヘアスタイルをつくるときのテクニックこだわりって、細かすぎて、お客様に伝わらないこが案外多いんですよ。それよりは、持ちが良かったり、毎日簡単に可愛くなれることのほうが、お客様にとっては嬉しいはずで。
―お客様にとっての嬉しいを叶えるうえで、取り組んできことは?
Instagramの保存数などチェックして、本当に望まれていることって何なのかを考えています。だから僕、カットの仕方は毎日変わっていってますね。飽きさせたくないというのもありますし、常に“可愛い”の可能性を探っている感じです。
ただ、切り方そのものよりも、シルエットの流行りを押さえることのほうが大切だと思ってて。顔まわりはもちろん、長さやウエイト位置、アウトラインの角度など、全体のバランスで旬の雰囲気にもっていくことが多いです。
とことん突き詰めたことで得られた
可愛いをつくるテクニック。
画像:へぎさんのInstagram(@hegi__sand)より
ーシルエットをつくり分けるテクニックとなると、基本的なテクニックが重要ですよね。
そこは、ショートをとことんやったことで培われた部分がかなりありますね。
もともと、デビュー当時はミディアム推しだったんですよ。そのときはアカウントを盛り上げたいという狙いと、自分の力量とのバランスで選んだ部分もあって。
その後、sand全体でショートを推していこうということになって、僕自身もかなり研究もしたし、改めて学びなおす機会になりました。
―力量の点で、どんなところが足りないと感じてた?
可愛いヘアスタイルをつくれるかどうか、という部分ですね。短い髪型はカットできたとしても、それでお客様が魅力的になるかは別の問題なので。
だから、ショートを推し始めた頃は本当に様々なスタイルを見て、考えて、切ってみて、可愛いシルエットを研究しました。美容師としてお客様をカットする以上、エゴで攻めすぎてもだめで、感動してもらえるものにしないと意味がないですから。
お客様の幸せに直結する
楽しめるレッスンを。
―後輩に教えることもあると思うけど、意識していることは?
いかに楽しみながら進める環境をつくれるか、を一番大切にしてます。先日もシャンプーレッスン中の後輩に、カットやってみようかということで教えたんですけど、「めっちゃ楽しいです!」とすごく喜んでくれて。
―楽しんでもらうために、どんな工夫をしてるんですか?
例えばカットだと、教育チームがつくった流行のスタイルを練習項目にしています。「この髪型、誰につかうの…?」というスタイルを切るよりも、お客様を可愛く幸せにできることに直結するスキルを学んだ方が楽しいですし、実際、上達も早いんです。
どの技術でも、お客様の笑顔に結び付くことだったり、インスタでバズるかも!? だったり、期待や楽しみが見えると、自然と練習にも積極的になれるんですよね。ゾーンに入るみたいな。sandのスタッフはみんな、自主的に休みの日に撮影したり練習したりしているんですが、それって楽しみを感じられているからだと思います。
遠回りしたからこそ
“分からないこと”が分かる。
画像:へぎさんのInstagram(@hegi__sand)より
―練習しているヘアがどんなものなのか、イメージもしやすそうですね。
どう見えたらお客様が可愛くなるか? のバランスが見えやすいというのはありますね。こちらからアドバイスするときも、狙いがハッキリしているぶん、「こうしたいので、こう切る」ということがお互い理解しやすい面もあって。
一方で、ベーシック技術の視点も大切だよ、ということは伝えていきたいところではあります。「なんでこうならないんだろう?」という疑問を解決したいときに役立つのが、ベーシックのテクニックだったりするので。
―へぎさん自身は、どんなアシスタント期間を過ごしてきたんですか?
僕自身はかなり遠回りしたタイプです。テストに受かるのも遅かったですし、低空飛行の時期が長かったんです。
その分、誰よりも先輩に質問して、聞いたことを試して、を繰り返しました。だから、後輩の「分からないこと」が分かるので、的確なアドバイスができる自負はありますね。
流行りだけじゃない、
お客様と長く付き合える美容師に。
画像:へぎさんのInstagram(@hegi__sand)より
―お客様に技術を提供するときに大切に思っていることは?
お客様のほぼ全員がInstagramを見て来てくださる方々なのですが、それでも、カウンセリングを一番大切にしています。朝の過ごし方とか、その人のライフスタイルに寄り添うにはどうしてあげたらいいのかを、すごくイメージしますね。
これまでの話に逆行するようですが、まずは流行りよりも悩みを何とかしてあげたいんです。お客様も、そこはハズしたくない部分だと思いますし。
―へぎさんのInstagramを見てると、特定の髪型を希望するよりも、要望に幅があることが多そうですね。
「この人だったら何とかしてくれそう」という印象は意識していますね。Instagramは来てもらうためのコンテンツとして、ベーシックなものを上げているのも、その理由です。
僕自身、お客様と長くお付き合いできる美容師でありたいと思っているんですよ。だからこそ、日常に寄り添えることって当たり前で、そこに、流行りのエッセンスや変化を楽しめる、僕にしかできない提案を加えているんです。
「導く」ために
テクニックを磨く。
―最後に、技術を学ぶときに、どういう気持ちで向き合うといいですか?
これはsandのテーマでもあるんですが、「導く」ということかなと思います。
後輩たちに対しては、美容を心から楽しめる存在に導いていきたいですし、お客様に対しては、美意識を高く持てるような髪型に導きたい。
美容師にとっての本当の勝負どころは、やはりお客様に来ていただいてからだと思うんです。ライフスタイルに合わせたりとか、可愛くして感動をあたえたりとか、誰かを良い方向に導くためにテクニックがあるので、楽しさを生み出すツールとして学んでいけるといいんじゃないでしょうか。
PROFILE
へぎ しょうた|sand
1994年8月14日生まれ。兵庫県出身。高津理容美容専門学校卒業後、都内1店舗を経て、2017年にオープニングスタッフとして『sand』に参加。約1年後の2018年10月にスタイリストデビューし、めきめきと売上を上げる。デビューから9か月後となる2019年の7月、omotesando店オープンに際して、同店の店長に就任。現在のInstagramフォロワー数は7万人を越え、トレンド感だけでなく、髪型を変えることにポジティブになれるコンテンツを日々発信している。