“パーマ低迷時代”の新たなパーマ活用法とは? 後編

「パーマが低迷している」と言われるこの時代にあっても、パーマをちゃんとウリにしている美容師さんも多くいます。彼らはパーマをどんな風に捉えているのか? どんな風に使いこなしているのか? 独自にパーマを追及している3人が集まって、新しいパーマの活用法を探ります。

PANELIST / 山口高宏(anemo / 左)、戸石正博(Shanty / 中)、岩澤雄志(COLORS Island / 右)

前編はこちら→“パーマ低迷時代”の新たなパーマ活用法とは? 前編

薬液選択には
“7番アイアン”が必要!

―一般的に、というと難しいかも知れませんが、薬液を選ぶ基準はどこに設定されていると想像しますか?

戸石今は仕上がりの手触りが大きいと思いますよ。添加剤の質感というか、かかり上がりがツルっとしていればOKというのはありますよね。それから数日して本来の髪の手触りが出てきたときに、お客様がどう感じるのかはあまり見ていないんじゃないですかね。

岩澤ゴルフの7番アイアン(スイングの基礎を固めるために、初心者が最初に練習するクラブ)ってあるじゃないですか。いわゆる中間の、飛距離の基準になるような薬液を持ってないことが多いんじゃないですかね。僕の場合はそれがシスチオなんですが、もうちょっといきたいと思えばチオを使う、違ったジャンルの質感を狙うならシステアミンを、という判断をするんですよ。でも、そういった判断の軸になるような薬液を設定できていないケースって多いと思うんですよ。

戸石逆に、万能系を求めている人が多いですよね。パーマ液って、本来そういう選択をしなければならないのに、これ1つで全部やる、みたいな。

―そういった手法では、使いこなしにはつながらないわけですか?

戸石ならないと思いますね。1つの薬液で全部、となると、よほどの達人(笑)。一方では、沢山の種類を揃えているだけでもダメなんだと思うんですよ。ロッドとの関係もあるし、熱を使うのかどうかもあるので、総合的なバランスを考えないと使いこなしにはつながらないです。

どのゾーンで
活用できる薬液かを知る

―ちなみに、皆さん自身が薬液を選ぶときは、どこに基準を置いていますか?

岩澤僕は「毛先の指通りが悪化しない」ですね。基本付け巻きなので、ダメージしている毛先をゴワっとさせないことが選択の軸になります。巻き収めの中間部分はあとからでも何とでもできるんですが、巻き込んだ毛先は触れなくなっちゃいますから。毛先に前処理をして中間部分に適した薬で…というのもありますけど、思ったよりダレた、というときに毛先にアプローチできなくなってしまうので、毛先を基準にしたいんですよね。

戸石毛先の指通りは大切ですよね。僕の場合は、毛先を一番に考えたときに、前処理をすることもありますし、岩澤さんみたいに弱い薬で毛先を決めておいて、後から付け足すこともありますから、その辺はケースバイケースですけど。ただ、基本的にパーマで毛先がボワっとなったらアウトだと思っています。それこそ、1回切ったらいい感じになりますよ、みたいな施術はちょっと無いなと。

岩澤1回分犠牲にしてますよね。

―例えば、還元剤の選び方という点では山口さんはどう考えていますか?

山口これよく話すんですけど、何を求めてウエーブを判断するのかだと思うんですよ。均一なウエーブをよしとするのか、僕みたいに、根元がゆるくて毛先が強いのをよしとするのか。色んな考え方があるわけですから、還元剤を選ぶにしても、店によってどこまでのマッピングをするのかも変わってくるのかなと。さっきの話じゃないですけど、そもそも化粧品分類と医薬部外品で分けちゃうと、おかしなことになりますよね。風合いもあるわけですし。

岩澤チオとシスに関していうと、この2つは同一線上にあると思うんですよ。

戸石そうですね、かかり方としてベーシックな感じはありますね。

岩澤一方でシステアミンは、この2つとは違う特色を持っているから、その差は知っておかないといけないですよね。ちなみに、チオグリセリンって最近どうなんですかね?

戸石ハイブリッドタイプで入ってるものが出てきてますね。チオグリセリンが単品じゃないとなると、軸として他に出てくるのは酸性系なのかな。でも、この酸性系もチオ・シス、システアミン、とはまた違った幅で使うものじゃないですか。この辺りの理解が難しいところなのかなと思うんですよ。チオとかシスだと低いpHではかかりにくいですし、システアミンは案外幅広いpHで働けるし、逆に酸性系は低pHで働くから健康毛には向かない、みたいな。どの幅のゾーンで使えるものなのかは知っておきたいところかなと思います。

強弱だけじゃなく
“かかり方”を知る

山口例えば、ショートボブのグレイカラー毛だったら何でパーマかけますか? ちょっとクセがあって、やや硬めのドライな髪質だとして。

岩澤作りたいデザインにもよるんですが、シスですね。

山口僕もシスを選ぶと思うんですよ。ちょっとクセがあって、乾燥毛で硬い。かつグレイヘアとなると、やわらかさが欲しいというのがその理由なんですが。ちなみに何でシステアミンじゃないんですか?

岩澤「どうしたいか」によるんですって。例えばもうちょっと長くてウエーブをつくるということだったら、システアミンというチョイスもあるんですけど、ショートボブというレングスに対して、パーマで今よりも良くすると考えると、毛先をちょっと曲げてあげればやわらかい風合いになるんじゃないか、というところでシスです。

戸石僕は現状自分で使っている薬液で考えると、システアミンとシスですね。低いpHで使って、スコンとロッド径に走ることは防ぎつつ。お二人と同じように、やわらかさを出すのに、シスが欲しいというのは共通していると思いますね。

―デザイン的にどういう風にしたいというのは皆さんそれぞれだとしても、アプローチの方向性は一致していますね。

戸石そういう意味では、皆がイメージしているのは単純な「強弱」じゃなくて、「かかり方」ですよね。山口さんが言っていたような、根元から均一にかかるとか、毛先に向かって入っていくとか、毛先の抜け方とか。そういう薬液ごとの特性があると思うので、そこを整理するのも面白そうですよね。

岩澤今って、単純に1液つけて、2液つけて、その仕上がりがどういう手触りになるのかを知らないことって多いじゃないですか。何が効いてて、何が良くなかったのか、自ら分かりにくしちゃってますよね。掛け蕎麦で言えば、蕎麦そのものの味も味わわずに、最初から調味料をドバドバかけちゃうみたいな。本来は、これならこういう手触りになるから、後処理でこれを使おうとか、先にシャンプーをしておこうとか、逆算してやらないといけないと思うんですよ。そのためには、最小限で施術したときの状態をちゃんと知っておかないといけないはずなんですよね。

戸石幅を分かっていないってことですよね。どんな薬液でもそうですが、ダメージ毛のお客様に使ってみてたまたま良かったから、これで健康毛もやろう、もっと傷んでいる髪にも使ってみよう、となっちゃう。その結果、対象毛髪じゃなかったがゆえに失敗してしまう、ということはあるのかなと思いますよね。結局それは薬液のせいじゃなくて、ジャッジの甘さが原因なわけですけど、上限と下限の幅を知っているかどうかが大きいんじゃないかと思います。

上限と下限の
理解から

自分の基軸をつくる

―手触りや風合いに加えて、髪の状態から判断することもやはり必要だと。それによって、必要以上のダメージも回避できるということですか?

戸石そうですね。システアミンをとっても、高pH高濃度だったら健康毛には向いているけどややダメージしている髪にはかかり過ぎてしまう。それが濃度が半分でpHもやや下がれば、健康毛には向かないけど、ミドルダメージのゾーンには合う、でもそれよりもダメージしているゾーンには厳しい、とか。あくまでも例ですけど、こういった上限下限の整理で余計なダメージは抑えられるんじゃないですかね。

山口ちょっと後ろ向きな発言になっちゃいますけど、ダメージへの考え方って結構バラつきありますよね。サロンなのか流派なのか個人なのかでも違ったりするじゃないですか。一見整理できそうで意外と…。

戸石捉え方が違いますよね。そこが難しいところですよね。

岩澤最近、髪の毛を捉える指針として、水分量と油分量のバランスを考えてみてるんですよ。その2つのバランスが崩れた状態とか、混在している状態が指通りの悪さの原因なんじゃないかと思ってて。よく、汗かく時期に襟足だけ引っかかることがあると思うんですけど、それは水分量がその部分だけ多くなっているからなんじゃないかと。どこかで引っかかるというのは、そこの髪が乾きやすくなってるとか、油分が少ないとか、そのバランスの問題なんじゃないかと考えたわけです。そこで挙がってくるのがシャンプー。ぎゅっと握りこむようにして、髪の毛にしっかり水分を与えるという発想なんですけど。

戸石髪の毛にダイレクトに薬液をつけるというよりは、拡散? 薬液だけで飽和状態にしない、みたいな発想ですか?

岩澤髪の毛が水分を失う要因として、浸透圧的な吸い上げの可能性を考えてみたんですよ。そうなると、水分が少ない状態で薬液を乗せるのがちょっと怖いんですよね。反応を均一にするために、素材を整えておくことってすごく大事だと思うんです。

山口岩澤さんのような発想をする人もいれば、というところでは、自分の基準をどこに持つかですよね。この前の毛束の実験でもやったような、バージン毛と中明度毛、高明度毛に対してどういう反応をするのかを見るだけでも、1つのモノサシができるじゃないですか。風合いとか質感は好き嫌いの世界だと思うんですけど、モノサシがなければそれも見えてこないでしょうし、どういうカールを出したいのかにもつながってこないんじゃないですかね。

“形をつくる”
“スタイリング補助”
どちらも扱いやすさがマスト!

前編にもありましたが、ただパーマをかけるということではなく、パーマで何ができるのか、という活用方法につながっていきそうですね。最後に、皆さんのパーマの捉え方を聞かせてください。

岩澤厳密に言うと、髪の毛を変化させるわけだから、傷まないということは無いじゃないですか。だからこそ、最終的に質感を良くすることが必要だと思うんですね。毛先をいかに指通りよくさせるか、傷んだと思われるような質感にしないかが重要で。さらにそれが、余計なことはせずに、シャンプーで仕上げて完結するものにしていかないといけないですよね。

山口僕、ミディアムレングスのミセスのお客様で、全体を12ミリでパーパスに巻いて、ブローで伸ばして内巻きにする方がいるんですけど。そういう方来ます?

戸石今は減りましたけど、いらっしゃいますよ。

山口そういうお客様って、最後シニヨンにして、ちょっとボリューム出してって仕上げるんですけど、こういう技術の考え方って、忘れてはいけないもののうちの一つなんじゃないかと思って。要は、パーマというよりスタイリング補助で、かっちりかけ切ったものをキレイに伸ばして持ちを良くするっていう。そういう捉え方がもっと広まってもいいのかなと思うんですよ。

戸石そうですね。今のパーマを考えたときに、形を優先してつくるものと、極力質感を崩さずにスタイリングのサポートをさせるようなものと、やっぱり両軸あるんですよ。いずれにしても、扱いやすい、扱いにくい、というのは大事になってくる部分で。毛先というのも、パーマで曲げてるわけですから、抵抗が強くなって絡んだ感じがするのも当然なんですよ。でも岩澤さんが言うように、そう思わせない質感に持っていくには、細かい仕事を丁寧にすることが案外大事なんだと思いますね。

―みなさん、どうもありがとうございました。

前編はこちら→“パーマ低迷時代”の新たなパーマ活用法とは? 前編

 

 山口高宏(anemo)
1975年5月12日生まれ。東京都港区出身。住田美容専門学校卒業。2015年に『anemo』を代官山にオープン。時間差還元を武器に、チオとシスの可能性を追求する熱血漢。

 戸石正博(Shanty)
1975年10月25日生まれ。東京都狛江市出身。日本美容専門学校卒業。都内3店舗を経て2000年に『Shanty』を三鷹にオープン。ダメージさせないパーマを追い求める熱の伝道師。

 岩澤雄志(COLORS Island)
1976年9月25日生まれ。新潟県妙高市出身。コーセー高等美容学校(現・コーセー美容専門学校)卒業。2店舗を経て2000年に『COLORS Island』に入社。通称“毛束のIWASAWA”。現在は髪のベースである頭皮に着目し、シャンプーを追及。