“パーマ低迷時代”の新たなパーマ活用法とは? 前編

「パーマが低迷している」と言われるこの時代にあっても、パーマをちゃんとウリにしている美容師さんも多くいます。彼らはパーマをどんな風に捉えているのか? どんな風に使いこなしているのか? 独自にパーマを追及している3人が集まって、新しいパーマの活用法を探ります。

PANELIST / 山口高宏(anemo / 左)、戸石正博(Shanty / 中)、岩澤雄志(COLORS Island / 右)

オーダーがないと
「パーマ」を選ばない?

―パーマを、サロンのウリになるメニューとして活用できていないケースって多いですよね? その背景には何があると思いますか?

岩澤「想い」が足りないですよね。髪型を作ろうと思ったら、当然選択肢に挙がるツールだと思うんですけど、そもそも、そこをやろうとする人が少ないんじゃないですか?

山口いきなり「想い」ですか(笑)。でも、入り口が逆になっていることは多いかも知れないですね。例えば直毛の人が、もうちょっと丸みをつけたいとか、もうちょっと動きを出したいと言ったときに、僕らだったらそれならパーマで、となるじゃないですか。でも今は、パーマがかかっているスタイルをオーダーされないと、パーマをチョイスしないんじゃないかと思うんですね。

岩澤今パーマを選択するとなると、分かりやすいゴールが必要になっちゃうんですよね、きっと。本来なら、ゴールから逆算して、曲げる行為が必要なのか、または伸ばす行為が必要なのか、足し算引き算を考えていくんですけどね。

戸石ゴールの形を作るために、パーマが必要なのかそうじゃないのかの線引きが上手くできないケースは多いみたいですね。見た目があからさまにパーマスタイルだったらパーマかけるけど、ニュアンス程度のカールや丸みだったらスタイリングで…という風潮はあるかも知れないですね。

岩澤考えてみると、パーマがブームになっていたタイミングって、ソバージュ、スパイラルパーマ、いわゆるホット系の…

戸石名古屋巻きみたいなものもありましたね。

岩澤そうです、コテ巻き風。やっぱり、比較的簡単に再現しやすいゴールがあったんですよ。だから流行ったんだと思うんです。でも今は、自分が作りたい髪形とかムードとか、質感ってあるじゃないですか。それを持ってないとパーマって使えないわけですから、そういう想いが足りないのかなと。そうなると、パーマって楽しいものじゃなく感じちゃいますよね。

“形をつくる”
だけがパーマじゃない

―目の前のお客様がパーマをオーダーしていなかったとしても、パーマを使えば希望が叶うとか、パーマでつくったムードがフィットするとか、最終イメージから導き出されるツールということですか。

戸石そうですね。例えばヘアカタって、カールやウエーブスタイルでも、まだまだコテ巻きが多いじゃないですか。だから、パーマで全く同じように再現しようとすると難しい面もありますから、やっぱり苦手意識につながってくる。でも、パーマでこういう雰囲気にもできますよ、という発想があれば、問題なく勧められると思いますね。

山口スタイリングの補助としてのパーマじゃないですもんね、今。

岩澤パーマって一言で言うと何ですか? 自分が思うパーマって。髪型を作る仕事の中で、パーマに何を求めてます?

山口やわらかさなんですよね。

戸石やわらかさの変化とか、ムード、ニュアンスですよね。コテだとやっぱり硬い感じがする。パーマにしかないものっていっぱいあると思います。

―岩澤さんは?

岩澤質感の変化ですかね。形か質感かと言ったら、質感。それは手触りもそうですし、見え方もです。さっき、形があるとパーマが流行るって話しましたけど、僕の場合は、流行っててもそうじゃなくても、やってることはいつも変わらないんですよね。

―みなさん、風合いというか質感というか、形だけではないという点で共通していますね。

戸石山口さんが言ってたように、スタイリング補助の発想ってあると思うんですよ。パーマ自体がスタイリングに近いというか。さっきのソバージュにしろ、スパイラルにしろ、コテ巻き風にしろ、質感的に硬いじゃないですか。そうじゃないパーマもあると思うんですよ。特に今は、コテコテのパーマよりは、ニュアンスが喜ばれるわけですし。その辺のニュアンスをつくり込むことが、使いこなせていない理由なのかなと思いますね。実際に、ゴールに対して、どうアプローチしたらいいのか分からないという声は多く聞きますし。

“質感が違う”
は手法の選択が
原因かも!

―ニュアンスややわらかさを作り出すためのアプローチということですが、それは薬液も含めて、ですか?

戸石もちろん薬液で悩むこともあると思うんですけど、それだけではないですね。単純な話では、ホット系パーマとか、クリープパーマとか、メニューの問題。例えば、本来だったらコールドの方が希望デザインに向いているんだけど、お客様が希望したものがホット系だったから、それで施術してしまったりとか。パーマというカテゴリーの中で幅が広がったことで、何を選択していいか迷ってしまうんですね。

―薬液はその中の一要素なわけですね。もうちょっと大きいくくり、というところでしょうか。

戸石パーマって、いくつかのゾーンがあると思うんですよ。その1つに薬液の使いこなしもあるわけですけれど、仮にパーマ液を全部理解したとしても、それですべてのパーマができるようになるかというと、そうはいかなくて。

山口以前、還元剤のかけ比べ実験をしたときに、システアミンが根元側から出て、チオ・シスが毛先中心にかかったじゃないですか。そういう薬液のクセを見極めていくと、根元側にボリュームが欲しいからシステアミンを使おう、という判断になってくると思うんですよ。やっぱり、根元にボリュームを出したいとか、丸みをつけたいとか、前段階でのイメージが必要ですよね。やわらかくて持ちもいいカール、となるとホット系でどうかけるか? になるわけですし。逆に、カリカリのオールドスクールなものを希望される場合も有り得るわけですから。

戸石そうですね、有り得ますね。カリカリ(笑)。

岩澤カリカリしてなきゃかかった感じがしない、という方もいますからね。ところで、パーマの失敗って、ざっと挙げると何があるんでしょうね?

戸石ビビリ毛になってしまうみたいな失敗って、そこまで多くないですよね。むしろ、思い通りにならなかったとか、手入れが大変になったとか、気持ちの面が大きいんじゃないですか。

岩澤気持ちの部分で言うと、やっぱり質感が思ったものではなかった、ということが大半だと思うんですよ。思ったよりカリカリだったとか、思ったよりカリカリじゃなかったとか。

山口あとはロッドの配置もありません? 例えば顔まわりのレイヤーが入っているところに、カットラインとステムをズラして巻くと、必然的にパネルの下側が逃げやすくなるじゃないですか。そうすると、思ったよりも毛先のバイン! ってカールの…バインって分かります?

戸石分かります。バインってバネみたいな毛先の感じですよね(笑)。

山口そうそう。思ったよりバインって入らなかったりする。パネルの短いほうに合わせた結果、長いほうの毛先が流れてしまった、ということなんですけど。こういう、ロッドの配置や巻き方が原因という失敗も多いと思うんですよね。

パーマを
薬液から考える?
ロッドから考える?

岩澤パーマをかけましょうというときに、薬液から考えるのか、ロッドから考えるのかで、大きく分かれると思うんですよね。この3人では…

―ロッドからと、薬液からとでは、最終的に目指すところに違いはありますか?

山口変わらないんじゃないですか? 僕はロッドからなので、髪の状態と欲しいカールに合わせてロッドを選んで、それを基準に薬を選ぶ。逆のパターンは、ダメージに合わせて薬剤を選んで、それを基準にロッドの太さを決める。そういう感じですよね?

―戸石さんはどちらから入ります?

戸石ダメージに合わせて薬液を選びますね。あとは施術方法で、コールドだったらこれ、クリープだったらこれ、ホット系だったらこれ、という熱が加わることによっての薬液の段階と、それによるロッド選択の変化がありますね。そんなに、大袈裟に変えはしないんですけど、薬液とロッド選定のバランスってやっぱりあるじゃないですか。以前からよく言われる話で、新しい薬液が出て普段通りのロッド選定で試してみたら、全然かからなかった、ってありますよね。特に、それまで使っていたものが強い薬液とビッグロッドだったりすると、よくそういうことが起こるんです。その意味で薬液の性格と、巻き方や配置も含めて、ロッドがどういう関わり合いをしているのかを総合的に判断することが大切かなと思います。薬液だけを軸にしちゃうとすごく幅が狭くなっちゃうんですよ。

岩澤ロッドから入るタイプの人で、昔よくあったのが、シスでかからないから上からチオ足しちゃう、みたいな。それによる失敗が多い時期ってありましたよね。そもそも薬液を変えるということは、質感も変わっちゃうじゃないですか。髪の状態に対して、これ以上強い薬は使えないから巻き方はこうしよう、という発想をしていかないと良い質感にはならないと思うんですよ。あともう一つの問題として、テストカールができないケースが多いじゃないですか。チオやシス、システアミンをとっても、それぞれのテストカールって見るポイントやタイミングって違うと思うんですよ。

“化粧品=弱い”
で痛い失敗も!

山口システアミンが出始めた頃、失敗しましたね。化粧品=かかりが弱いという意識があって。チオやシスの感覚でかけたら、ダレというか、カールが膨らむ感じがなくて、アレ?って感じで。

戸石ロッド径のままかかったんですね。

山口そうなんですよ。ウエットとドライのギャップが少なくて。

岩澤それまでの化粧品って、チオ換算で2%未満でしたよね。かかる化粧品って考えてなかった。

戸石そうですよね。あとはサルファイトがあったりとかして。化粧品=トリートメントみたいな概念でしたよね。

―化粧品=傷まないという捉え方って、まだ残っている実感ありますか?

戸石だいぶ少なくなったと思うんですけど、どうでしょうね?

山口いやぁ、僕が思ってますから(笑)。真面目に言うと、それならチオやシスの医薬部外品タイプを使う人がもっと増えててもいいかなと思うんですよね。むしろ、チオを使うのが怖いっていう人もいるくらいなんで。

戸石チオは怖いっていう人いますよね。健康毛用のシステアミンしか置いてないっていうサロンさんもありますよ。万能だ、ということらしいんですけど、常にフルスイングだなと。

岩澤そっちのほうがよっぽど怖いですね。でも、その手の薬液でピンパーマかけちゃう人もいるじゃないですか。付け巻きで。根元折れちゃうんじゃないかと思いますよね。

…後編に続く!

 山口高宏(anemo)
1975年5月12日生まれ。東京都港区出身。住田美容専門学校卒業。2015年に『anemo』を代官山にオープン。時間差還元を武器に、チオとシスの可能性を追求する熱血漢。

 戸石正博(Shanty)
1975年10月25日生まれ。東京都狛江市出身。日本美容専門学校卒業。都内3店舗を経て2000年に『Shanty』を三鷹にオープン。ダメージさせないパーマを追い求める熱の伝道師。

 岩澤雄志(COLORS Island)
1976年9月25日生まれ。新潟県妙高市出身。コーセー高等美容学校(現・コーセー美容専門学校)卒業。2店舗を経て2000年に『COLORS Island』に入社。通称“毛束のIWASAWA”。現在は髪のベースである頭皮に着目し、シャンプーを追及。