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“すぐ取れそうなパーマ”と“ゆるいパーマ”の差ってどこ?

どちらも、ウエーブの強さで言うと弱い“すぐ取れそうなパーマ”と“ゆるいパーマ”。でもこの2つには決定的な違いがありそうです。

 

 

刷り合わせ
から導き出される
ゆるさ

TOMOTOMO BASIC SERIES VOL.02の誌面と連動して行われた2つのセミナーの第2弾となる「システインのデザインアプローチ」セミナー。

講師を務めてくれたのは、Shantyの戸石正博さんと、COLORS Islandの岩澤雄志さん。
サロンワークでも日常的にゆるいパーマ(もちろん、しっかりパーマも)を提案しているお二人ですが、今回のセミナーでも、それぞれにモデルさんを1名ずつ施術してもらいました。

まず戸石さんの施術からスタート。
毛髪診断をしながら、「髪のダメージを確認して、できるパーマの上限と下限を把握します。そのうえで、お客様に、どういうパーマがかけられるかを伝えてお互いの仕上がりイメージをすり合わせていくことが大切」

 

 

髪の“バネ感”が
ポイント

戸石さんのモデルは、これまでに「パーマが一度もかかったことがない」、「アイロンで巻いてもすぐに戻ってしまう」という直毛の女性。

毛髪診断では複数毛束を取って、根元~毛先にかけて、ループを作りながら髪の「バネ感」をチェックしていきます。

「バネ感」の有り無しは、パーマがかかるかどうかの重要な判断ポイント。今回のモデルさんは、毛先がギリギリかかるかな? という状態です。

 

 

素材に合わせた
薬の選択も必須

ホット系機器を使って、ゆるいながらも持続性のあるカールをつける施術を行っていきます。
1液を塗布する工程は、もう1人の講師の岩澤さんも「ここは注目して見て欲しいですね」と言うくらい重要なポイントが隠れています。

戸石さんが選んだ薬は…
酸性システイン(毛先に塗布して保護)
ハイブリッドタイプの弱(システイン、チオグリセリンなど4種 / 毛先6~10センチ)
ハイブリッドタイプの中(システイン、チオグリセリンなど4種 / 中間)

これらを、ダメージ具合はもちろん、削ぎが入れられている量(毛先の厚みのバラつき)に応じて、塗布幅も含めて、塗り分けていきます。

 

 

最適な還元を狙って
塗り分ける

「戸石さん、もう仕事終わりましたね」と、岩澤さんが塗布を終えた戸石さんに声をかけます。

毛髪診断の際の上限下限にもつながりますが、狙ってゆるいパーマをかけるには、どれくらいの還元が適切かをイメージすることが大事です。

質感がパサパサ、ガサガサになってしまっては、魅力も半減してしまうので、髪に必要以上の負担をかけないためにも、1パネルごとの厚みや手触りを感じながら臨機応変に塗り分けていくことに、もっとも集中力を使うそう。

 

 

毛先の厚みを軸に
ワインディング

塗布とワインディングでは、根元の方向、髪の落ちる位置から逆算してステムや引き出し位置をコントロールすることは共通ですが、スライスの厚みに差があります

塗布するときは1パネルの状態をしっかり見極めるために、根元の厚みが基準。

ワインディングするときは、加温時に均一に熱がまわるように、毛先の厚みを基準にします。

 

 

質感アップのために
“あえて”システイン

戸石さんが加温に入ったタイミングで、岩澤さんの施術がスタート。

「施術する前に比べて、質感や手触りが良く感じられるのが良いパーマ」と話す岩澤さんのモデルさんは、ダークトーンでハリのある髪質の女性。

普通ならチオシスや還元力が高めのシステアミンを選択しそうなところですが、「やわらかさと自然な毛先の曲線」を狙って、コールド×システイン単品で攻めます。

 

 

ドライ状態からの付け巻きで
水分量をコントロール

 

「岩澤さんの施術は、かなりヤラしいですよ」と戸石さん。
その1剤塗布の工程は、

処理剤をフォーム状にして塗布 → タッピング → パーマ剤塗布 → ワインディング → 水スプレー → ロッド握リング → 放置…

というもの。

フォーム状にした処理剤とパーマ剤という最低限の水分量でワインディングをし、全体を巻き終わった後に、最初に巻いたパネルから順に水分と物理的な握りを与えていくことで毛髪内の水分を循環させて還元を促進するイメージです。

 

 

ロッド選定は
かなり細め


ゆるいパーマを狙う中でも、ロッド選定は13、17、19、23ミリとかなり細め。
髪の状態とシステイン、コールドパーマ、そして狙うウエーブ、それぞれを考え合わせての選択です。
また、レングスから読み取れる、「髪のここを曲げたい」というイメージが何よりも大事になります。

太いロッドで大きくウエーブを出すのではなく、髪が積み重なったときの見え方を考慮しています。
しっかり毛先を入れたい部分と、曲げる程度でよい部分を組み合わせることで、ゆるいパーマをより自然、かつ立体的に仕上げることができるようです。

 

 

工程の意味を踏まえて
薬剤の効果を
最大限引き出す

岩澤さん特有の握りのテクニックは2剤の工程でも行われます。
塗布前に余計な水分を握り出し、酸化剤を効果的に働かせるイメージです。
今回はブロム酸の2度付けのため、再塗布するときにも握リング。

パーマの毛先の質感の劣化の原因として、岩澤さんは酸化不足を挙げています。
毛先巻きをした場合の毛先の酸化不足を解消するために、握リングで物理的に水分を循環させてしっかり酸化させる狙いがあります。

 

 

狙って作るからこそ
ゆるさもデザインになる

 

ゆるいパーマをデザインにするには、やっぱり狙いとそれに合った施術工程を具体的に設計することが必要なようです。

カウンセリングでのお客様との意思共有
曲げたい距離とそれに合ったロッド径選択
髪に余計な負担をかけない薬剤のパワー設定
必要最低限のパワーだからこその、薬剤効果の引き出し方

こういった一つ一つの積み重ねがあるかないかで、「すぐ取れそうな弱いパーマ」と「ゆるくてかわいいパーマ」は差がでるんじゃないでしょうか。

 

いつも髪がストンと真っ直ぐ落ちてしまう、もうちょっとニュアンスが欲しい、毛先が少し内に入るともっといいのに…そんな風に思っているお客様がサロンにいたら、是非提案の参考にしてみてくださいね。

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