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サロンのスタッフ育成 Tycann(東京・渋谷)の場合

若手スタッフの育成には、その時代の美容室を取り巻く環境が影響します。若い美容師の戦力化と、離職を防ぎたいという課題を抱え、この数年多くのサロンが育成の見直しを行っているところ。TOMOTOMO LABO.がお届けするレポート第2回は、原宿のサロンTycannの取り組みです。

 

デビューまで5年以上かかった
カリキュラム

原宿の細い通りにあるTycannは10年前にオープンしたサロンです。オーナースタイリストである栗本龍一さんが50代前半、4人のスタッフは全員男性で、30代3名と20代1名という構成になっています。

カットにこだわりのあるサロンとしてスタートしたTycannでスタイリストになるには、高度な技術が必要なカットスタイルの数々の試験に合格しなければなりませんでした。その当時のカリキュラムを見てみると、就職して1~3年めまでは、おもに先輩スタイリストのヘルプをするのに必要な技術を練習、カットの練習がスタートするのはその後からになっています。

 

以前のカリキュラム例
●シャンプー/メンズのカット後流し メンズのシャンプー ロングのシャンプー
●カラー/カラー剤塗布バックのみ カラーシャンプー
ファッションカラー グレイカラー ホイルワーク
●ブロー/ハンドブロー ボブのブロー ロングのブロー
サイドグラデーションのブロー
●パーマ/オールパーパス サイドグラのワインド ロングのワインド
逆巻き ベリーショートのワインド
●カット/ワンレングス 前下がりボブ イサドラ マッシュルーム
ロングレイヤー ミディアムレイヤー ショートレイヤー
セイムレイヤー 刈り上げショート グラデーションボブ
サイドグラデーション エレベーションカット ステップカット

 

しかしこのカリキュラムをクリアしてデビューしても、お客様をつかんで売り上げを上げていくのはそう簡単なことではなかったのです。

 

お客様をつかむ力を

どう育てる?

さらに、レッスンに時間をかけても、アシスタントの技術習得の効率が上がりにくいという問題もありました。特にウイッグで練習している間は、集中力が低下し、どうしても緊張感が薄くなりがちでした。

こうした状況を変えようとスタッフからの提案もあり、Tycannは4年前にカリキュラムを大幅に変更しました。今のサロンワークではあまり使われていない項目をはずし、若手スタッフがデビューしたらすぐ必要になるスタイルや技術を中心に学ばせることにしました。

 

実践を意識したモデル練習に

大きく移行!

新しく切り替えた育成では、シャンプー、ドライ、カラー剤塗布を身につけた後は、すぐにモデル練習に入るように指導するようにしました。学んでいく順番は特に決めずに、どのスタイル、どの技術から勉強しても自由。いまお客様が求めているスタイルを、相手が喜ぶように作る実践練習を徹底しました。

実際にモデルにスタイルを作ってみて、できなかったこと、わからなかったことをそのつど解決していき、マンツーマンでつく教育担当者も、モデル練習に沿って技術や知識のアドバイスを行うようにしました。

ウイッグよりも人頭で練習するようになってから、集中力は以前より明らかに高まり、勉強するモチベーションもアップしました。

モデルさんに喜んでもらったり、リピートされることで、若いスタッフの承認欲求が満たされ、励みになるという効果もありました。

人と対することで、お客様をつかむ力をアシスタントのうちから鍛え、デビューの時には顧客がいる状態を作る。それがスタッフ育成の目標になっています。

 

デビュー後の強みを

作る勉強会

ただしこのような実践練習では、旬のスタイルや技術は身についても、かつてのカリキュラムに含まれていたような、高度なカット技術を学ぶことはできません。せっかくカットにこだわるルーツを持ったTycannなのに、これは勿体ない話です。そこで、スタイリストも参加するサロン全体の勉強会で、そうしたスタイルや技術を学べる機会を作りました。

勉強会で学ぶ内容には、特に試験やノルマは設けていません。今すぐは使わなくても、質の高いスタイルや高度な技術に触れさせ、経験させておき、いざ必要になったり興味を持った時にさらに深く学ぶこともできるようにしてあります。

デビューのための練習と、スタイリストとして強みを作るための勉強会を分けて設定したところに、Tycannの育成のポイントがあります。

※本記事の内容は取材時の情報で、現在は変更されている可能性があります。

 

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