切りたいデザインが、今のハサミの持ち方では切りにくいとしたら。

何やらみんなで手を合わせて、お祈りでもしてるんですか? という写真ですね。実はこれ、ハサミの持ち方について試しているところなんです。岡山のサロン、BARL SALONで行われたワークショップでの1シーン。

答えが先にあるものはつまらない。

BARL SALONの石田裕二さん(写真中央)とUNDERGROUNDの永田秀和さん(写真右端)が、交互に担当して行っているワークショップ。40代以上の方ならご存知かと思いますが、石田裕二さんはカットセミナーの講師を長年務め、TOMOTOMOでもベーシックカットの企画をよく担当していただいていました。つまりバリバリの「教える側」だったわけです。

その石田さん、最近はカット教育に関してこう考えているんだそうです。

「教育ってたいてい、答えが既に出ていて、それを教えることが多い。でも答えが出ているものってつまらないじゃないですか。教わる側にしてみたら、楽しくないとやらないですよね」
「だから今考えているのは、若い美容師さんに切る楽しさやデザインの仕方、考え方を発見してもらって、カット理論はその後から組み立てていくという方法もありなんじゃないかということ」
「本当はカットって誰かに教わるんじゃなくて、自分でやり方を探すのがいい。教えるとしたら、探し方を教えてあげたい。そうして各自が自分マニュアルを作り、思考錯誤してデザインするのが理想なんじゃないかと思います」

カットの“自由度”を高めるために、
いつもと違うハサミの持ち方で切ってみる

このワークショップはスタート以来、今までのカット教育で「こうすべき」とされてきた事項を、違う角度から見てみる作業を続けてきたそうです。冒頭の写真にあったハサミの持ち方というのもそのひとつ。「作りたいと思ったデザインと、それまで自分がしてきた切り方がフィットしないと感じた」という石田さん自身の経験から、最初に教わる「正しい持ち方」を、必ずしもそうじゃなくていいんじゃない? と提案しています。

石田さんが実際に自分で試したハサミの持ち方6パターンをメンバーに紹介し、参加者が実際にマネキンの髪をカットしました。手、腕、肘、肩の位置や使い方が今までとは違うので、最初はとまどう人多数。しかし慣れてくると、「なるほど、こっちの方が切りやすい」というコメントもありました。可動域が広がるのがポイントのようです。

ヘアスタイルのどこを切るのか、どの方向に切り進むのか、髪に対してどんな角度でハサミが入り、どんな形状の切り口を出したいのか――こうした要素に対して合理的なハサミの持ち方、身体の使い方、ポジショニングとは? 使っているハサミと作るデザインによっても変わってくると思います。「カットと身体性」というテーマを与えられた機会でした。